共産主義者同盟(統一委員会)






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■『戦旗』1657号(5月5日)4面

  
 技能実習制度廃止!
 
「育成就労制度」(政府案)は、奴隷制度だ

                                村上 哲

 

 岸田政権は三月一五日、「育成就労制度」の創設を盛り込んだ入管難民法などの「改正」案を閣議決定し、国会に提出した。「育成就労制度」(政府案)は現行の外国人技能実習制度の看板の掛け替えに過ぎず、数々のハラスメントや未払い賃金、長時間労働などの人権侵害の解決には程遠く「現代の奴隷制度」であるといっても過言ではない。
 また、「育成就労制度」創設とセットにして、新たな在留資格取り消し要件と在留カードなどとマイナンバーカードの一体化が提案されている。これらは、外国人差別、偏見を助長するもので、到底認められない。


「育成就労制度」(政府案)は、まったくのまやかしである

 「育成就労制度」(政府案)では、同一の事業所で一年以上すること、技能試験基礎級・日本語能力試験(N5)合格を条件に「本人の意向による転籍も認める」としている。しかしながら一方で「本人の意向による転籍要件に関する就労期間について、「当分の間、各分野の業務内容等を踏まえ、分野ごとに一年~二年の範囲内で設定」するとしている。これでは、様々な条件を付け、事実上転籍を困難にするものだ。現行技能実習制度で転籍制限を課し三年間同一の事業所に拘束していたことが、労働者の権利を奪い、数々の人権侵害の温床になっていた。また、転籍を困難にすれば、「安価な労働力」を安定的に確保できることになる。現行制度と何ら変わらず、技能実習制度の奴隷構造は新制度になっても踏襲されることになる。そもそも、転籍の自由は労働者の基本的な権利であり、労働者に転籍制限を課すべきではない。
 また、「育成就労制度」は、「特定技能1号水準の技能を有する人材」を育成確保することを目的にしている。では、これまでの特定技能制度の現状と課題はどうであろうか。
 特定技能制度は、「深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる」ことを目的として、特定技能実習1号及び特定技能実習2号を創設し、二〇一九年四月から実施した。特定技能1号は、介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の一二産業分野。但し、今年度中に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業を加えた一六分野になることが確定している。在留期限は上限五年。家族滞在は認められていない。特定技能1号の労働者は、二〇万八四二五人(二〇二三年一二月末、入管庁統計、以下同じ)そのうちの約八割が技能実習生からの移行組だ。特定技能2号労働者は、特定技能1号の介護を除いた一一産業分野で、建設三〇人、造船・舶用六人、機械金属加工一人。家族帯同も認められている。特定技能1号、2号は、いずれも同業務内での転職は認められている。
 特定技能労働者も技能実習生と同様に、「安価な労働力」として低賃金に抑え込まれている実態がある。特定技能労働者も産業分野で賃金格差があるものの、最低賃金近傍が多く、所定内賃金の平均は一九・八万円(二〇二三年度)にとどまっている。
 特定技能労働者も技能実習生と同様に、「安価な労働力」として低賃金に抑え込まれている実態がある。特定技能労働者も産業分野で賃金格差があるものの、最低賃金近傍が多く、所定内賃金の平均は二〇万六〇〇〇円(二〇二二年度)にとどまっている。同一労働同一賃金の原則からみれば日本人労働者の賃金水準より低い実態がある。また、労働条件が実態と乖離していたり、劣悪な職場環境や結婚・出産についてトラブルとなるケースが数多くある。特定技能労働者は、技能実習生として三~五年、日本の生活にも慣れ、自らの人生設計を日本社会の中で描こうとしている人たちも多い。家族帯同が可能なのは、特定技能2号のみだ。ここに行きつくためには、長い期間がかかり、資格要件も厳しい現実がある。こうした問題に対して「育成就労制度」(政府案)は、まったく応えようとしていない。
 家族が共に生活するという当たり前のことが認められない制度は即刻廃止すべきである。労働者の基本的な権利が守られ、労使対等原則が担保された制度設計こそが求められているのだ。


技能実習制度廃止、入管法改悪に反対しよう!

 わたしたちは、まっとうな「外国人労働者の受け入れ制度」確立のために力を尽くさなくてはならない。日本社会には、二〇二三年六月末現在、技能実習生約三六万人、特定技能労働者は約一八万人の人々が建設や介護、食品加工などの現場で働いている。もはや、外国人労働者を抜きに日本社会は成り立たなくなっているといっても過言ではない。みな共に暮らし、働く仲間たちである。ところが現状は、数々の人権侵害が横行して、劣悪で危険な労働環境、低賃金、長時間労働のなかで暴言、暴行も日常化しているといえる。これまでの「有識者会議」の議論及びその結果としての「育成就労制度」(政府案)には、技能実習生の人権が軽んじられ、対等な労使関係もなく、人間としての尊厳が踏みにじられている現状を解決する内容を読み解くことはできない。
 そして、岸田政権は、「育成就労制度」(政府案)とセットとして永住資格取り消し制度を導入しようとしている。これは、「育成就労制度を通じて、永住に繋がる特定技能制度による外国人の受け入れ数が増加することが予想されることから、永住許可制度の適正化を行う」として、税金や社会保険料を支払わなくなった場合や、軽微な刑法違反を行った場合に永住資格を取り消すというものだ。また、在留カードおよび特別永住者証明書とマイナンバーカードの一体化が目論まれていることは、外国籍住民への管理、監視を強化し、差別、偏見を助長するものだ。入管法改悪に断固として反対しよう。

 


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